浜松医科大学脳神経外科 講師
日本脳神経外科認定 専門医
2017.2.7
重い後遺症を残す患者さんも多い「脳梗塞」。認知症や寝たきりを引き起こすとされ、恐れられていますが、初期段階で気づけば大丈夫です。原因や予防法などについて学びましょう。
下記の項目に当てはまるものがある方は「脳梗塞」になるリスクが高い人です。
□血圧が高い(高血圧) □血糖値が高い(糖尿病)
□コレステロール値が高い(高脂血症)
□心臓病 □不整脈
□肥満である □肉や脂っこいものが大好き
□お酒をよく飲む □タバコを吸う
□ストレスがたまっている
□家族に脳血管疾患や高血圧・糖尿病・高脂血症の人がいる
いくつチェックが入りましたか? 一つでもあれば脳梗塞に関する適切な対策を行っていきましょう。
脳梗塞とは脳の血管が詰まったり、細くなったりして、脳に酸素や栄養がきちんと届かなくなることによって起こります。
酸素や栄養が届かないと脳の細胞は壊死し、機能障害が起こります。影響を受けた部位に応じて、半身麻痺や言語障害、記憶障害、視覚障害など症状が異なりますが、いずれの場合も日常生活は一変。最悪の場合は死に至ることもある、とても怖い病気です。
しかし、軽い脳梗塞であれば随分良くなります。軽い段階で発見するためにも、ちょっとした前兆を見逃すことなく、正しい知識を得て、気になることがあるときは医師のアドバイスを受けることが大切です。
脳梗塞にはタイプがあります。これまで日本人に多かったのは高血圧が原因で細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」でしたが、最近では欧米に多い、太い血管が詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」が増えています。
その背景にあるのはコレステロールの多いお肉や乳製品中心で野菜不足になりやすい、食の欧米化です。
先述の「こんな人は脳梗塞になりやすい!」のチェック項目を見てみると一目瞭然。食事をはじめとする日々の生活習慣やそれによるトラブルがほとんどです。つまり、脳梗塞になるか・ならないかは日頃の生活習慣と密接に関係します。さて、今のあなたの生活はどうでしょうか?
塩分やカロリーの管理は大切ですが、急に変えるのは難しいでしょう。食事の量を少し減らす、醤油のかけすぎに注意して塩分を控えるなどのちょっとした変化を加えるというのがやりやすいのではないでしょうか。なかなかひとりではできません。家族のサポートがあるといいですね。
さらに大切なことは医師にアドバイスをもらうことです。脳梗塞の経験がある方は当然ですが、健康に自信があるという方も職場や市区町村で行っている健康診断を受けてください。
その上で、下記のような、いつもと違う症状を感じたら専門の医療機関を受診しましょう。脳梗塞の予兆が起きている可能性があります。
□めまいがする
□目が見えにくくなる
□ろれつが回らなくなる
□言葉がうまく出てこない
□相手の話が理解できにくくなる
□立ち上がったり、歩き始めにふらつく
□忘れっぽくなる
□食事が飲み込みにくくなる
□左右どちらかの手足が動きにくい
□左右どちらかの手足がしびれる
□突然、頭痛が起こる
これらの症状は数分でおさまることが多いので、けして見逃さないようにしてください。なお、このリストはひとつの目安であり、医師の診断ではありません。気になることがある方は医療機関を受診してください。
脳は身体と心の司令塔です。わずかなトラブルが命取りになりかねませんので、どんな些細なことでも医師に相談してください。
脳梗塞による死亡者は冬になるにつれて増加します。その理由は寒暖の差が大きいと血圧の変動が大きいためです。血圧が急上昇し、発作を招くようです。
そういわれてみると、寒さでトイレも近くなり、夜中に目が覚めるという方もいるでしょう。
ご高齢の方は温度や湿度の変化への適応能力が弱いので気をつけましょう。少しの移動にも何かを一枚羽織るなどして、自分の身を守るようにしてください。